昔に比べて、今の車は車体の重量がかなり増えています。かつては1トン程度だった2000ccクラスのセダンタイプの車も、
現在ではおよそ1.3トンにまで増え、それと同時に、自動車のボディに使われる素材も変わってきました。
これは、自動車の衝突安全性を追求した結果だと考えられています。
ここでは、車のボディとして使われる素材の種類と特徴について詳しく説明していきます。
自動車のボディに使われている素材で最もポピュラーなのが、鋼鉄を圧延機にかけて板状に引き延ばした「鋼板」と呼ばれる素材です。
鉄は加工がしやすく、複雑な車体のカーブなども、プレス加工によってつくることができるというメリットがあります。
かつて、鋼板を使った車は重量が重くなるため省燃費性能の点でやや劣ると言われていましたが、
ここ数年、「高張力鋼鈑(ハイテン)」と呼ばれる素材が多用されるようになり、軽量化が進んだだけでなく、
コストと生産性の問題も大幅に改善しました。ハイテンの最大のメリットはボディを薄く(軽く)しても、
これまでと同じ強度レベルを保てるという点です。
もちろん同時にデメリットもあり、改良すべき点は存在しますが、すでにこのハイテンを使った軽量ボディの自動車が数多く生産されています。
今後の技術の進化に期待しましょう。
自動車のボディにアルミを使う最大のメリットは、車体の重量を軽くできること。 アルミの比重は、鉄と比べるとおよそ3分の1です。 アルミを鉄と同じ重量にした場合、その強度は鉄の3倍になります。 とは言え、車内の広さを考慮すると3倍もの厚さにはできませんから、アルミを使いつつ高い剛性を実現しようとすると、 軽量化できるのは、鋼鈑を使った場合と比べてせいぜい40%といったところ。
また、アルミは鋼板と比べてコストが高く、プレス加工で車体をつくることは容易ではありません。 市販されている自動車ではスポーツタイプの高級車など、ごく一部の車種にしか使われていないのが現状です。
その他、自動車のボディに使われている珍しい素材としては、映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」に登場したことで 有名な「デロリアン」に使われているステンレスがあります。
ステンレスは鋼板よりも丈夫で錆びにくく、コストも鋼板と同じぐらいですが、
合金の性質上、プレスによる成形が難しいというデメリットがあります。
電車のように平面中心の車体には頻繁に使われますが、自動車のような曲面をつくり出すには設備投資が必要なため、
コストが大幅に増えてしまうのです。このような理由から、現在、大衆車にステンレス素材は使われていません。
また、木製の自動車も存在します。イギリスのモーガン社(1908年創業)によるスポーツカーで、
木製のフレームは現在でも職人によって手作りされています。
ちなみに価格は、中古でも1千万円以上と大変高額で、根強いファンたちにとっては「永遠のあこがれ」とも言える存在です。