近年、鈑金塗装業界のイメージは大きく変わりつつあります。
全国的チェーン店のCMが頻繁に流れるようになり、従来の印象を覆すおしゃれな店舗も増えてきました。
ディーラーからの間接受注が中心だった時代から、「顧客に選ばれる専門店」へと進化を遂げているのです。
そこで今回は、鈑金塗装業界での独立を目指している方に向け、開業に必要な情報をお伝えします。
起業を考えたとき、まず迷うのが、個人事業としてはじめるか、それとも法人を設立するか、ということではないでしょうか。
まずは、開業手続きや税制面での違いについて比較してみましょう。
税務署に開業届を提出すればすぐに開業でき、定款作成も登記も不要です。この手軽さは大きなメリットと言えるでしょう。
法人事業を開始するには、定款作成・定款認証・設立登記などの手続きが必要で、およそ25?30万円ほどの費用がかかります。
また、会計処理・税務処理が難しいため、税理会計を専門家に依頼するならば、そのぶんのコストもかかります。
なお、1人でも従業員を雇った場合、社会保険に加入しなければなりません。負担しなければならない保険料についても、しっかり把握しておきましょう。
法人の税制は個人事業より優遇されるので、うまく利用すれば節税対策になります。
例えば、経営者の役員報酬を支払い、経費扱いにすれば、給与所得控除とみなされて所得税や住民税が節税できます。
また、家族を役員にして所得を分散すれば、経営者としての所得税・住民税が節税できます。
その他にも、経営者の生命保険料を会社の経費にできたり、赤字の繰越控除ができたり、といった経済的メリットがあります。
ただし、そのぶん負担も大きいことから、まずは個人事業からはじめ、消費税の免税を2年間受けた後、法人化するケースも多いようです。
鈑金塗装業設立の際に適応される法律は、建築基準法・消防法・水質汚濁防止法・下水道法・騒音規制法・振動規制法・悪臭防止法などです。また、市町村ごとの条例によっては、工場設置認可も必要になります。
塗料・シンナーなどを扱うための届出は労働基準監督署へ、火を使用する設備の設置届や、少量危険物取扱届は消防署へ。様々な届出を各関係省庁に提出する必要があります。
詳しくは、開業を予定している市町村で情報を得るとよいでしょう。
鈑金塗装業を行うための店舗選びは、極めて難しいと言われています。
火器や塗料を用い、騒音も発生するため、住宅街での開業は難しく、店舗として貸してくれる賃貸業者も限られてきます。
都市部よりも地方の方が、希望に合った物件が見つけられるかもしれません。
規模にもよりますが、最低でも溶接機(アーク溶接機・点溶接機・ガス溶接機など)、
車体修整機、鈑金工具一式、塗装機器(スプレーガンなど)、塗装乾燥装置、パテ類などが必要です。
設備機器購入費用として、200万円程度は用意すべきでしょう。
なお、許認可や届出が法定化されている設備もありますので注意が必要です。
その他、工事費・宣伝費・事務用品費・装飾品費なども含めると、初期設備投資に必要な総額はおよそ1500万円程度と言われています。
非常に多額のコストがかかりますので、中古を探したり、段階的に設備投資するなど、綿密な計画を立てるようにしましょう。
クレームがくると営業しづらくなるため、近隣へ配慮するための設備もしっかりそろえるようにしましょう。
塗装ミストで迷惑をかけないように、フィルターの管理やダクトの設置も忘れずに。別途、脱臭装置も取り付けるとなおよいでしょう。
インターネットオークションで全国からパーツを取り寄せたり、卸しを通さず、メーカーや海外の販売店から直接仕入れたり、
インターネットの活用機会は今後も増えていくでしょう。
車を大切にする人にとって、鈑金塗装の技術こそが、業者を選ぶ際の決め手となります。
技術を磨き続け、多くのお客様に喜んでいただけるお店を目指しましょう。